紆余曲折な人生を経て 私がこのまちで起業した理由(鈴木 美緒(すずき みお)さん)

更新日:2023年04月03日

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令和元年度より春日部市で開催している『まちを「知る」「好きになる」セミナー』の第2回にご登壇いただいた、株式会社 grain grain(グレイングレイン)の代表取締役、鈴木 美緒さん。地元、春日部で起業し、通所介護、事業内保育園、カフェ事業を主に運営されています。鈴木さんが、まちのプレイヤー(まちを想い、より良いまちとなるよう日々活動している人)としてパワフルに活動されている理由や、その先にある未来について語っていただきました。

紆余曲折な人生を経て私がこのまちで起業した理由

画像:came came(かめかめ)30の皆さん

春日部市内に2店舗、5事業を展開している株式会社grain grain。平成25年に創業し、大場に『つぶつぶ保育園』とデイサービス『おむすび』を融合した複合施設をオープン。令和元年には、大枝に予防介護サービスと事業内保育所を融合した自然食カフェ『came came 30(かめかめさんまる)』をオープンしました。

「2店舗目となるこの土地は、両親がパン屋を営んでいて、地元でも有名な店でした。私は長女として生まれ、社会人になるまで暮らしていました。商売人の娘なので、小さい頃の夢はここをカフェにすることだったのです」。

高校生になると、その夢は体育教師になることに変わった。まずは社会人経験が必要と考え、都内の外食産業に入社。2年間という期限を決め、がむしゃらに従事したといいます。その後、同社社長が理事長を務める私立高校への転職を希望。学校会計を任せられました。妊娠・出産を経て、育児休業から復帰すると、ようやく念願の体育教師になる夢が叶ったのです。

しかし、何事も手を抜けない性格のため、育児と仕事の両立は想像以上に大変でした。鈴木さんは悩んだ末に退職し、育児に専念することを決意。最後の出校日となったのは、平成23年3月11日。「あの日、東日本大震災が発生し、何かを断ち切られたような気持ちになりました。『私には何ができるのだろう?』と考えた時、戻っていた地元、春日部のために命を使おうと決めました。その瞬間からご縁がつながって、居抜きで介護施設を譲り受けることになったのです。

他のデイサービスと差別化をするため、保育園と融合させることを思いついた鈴木さん。「子どもにとって、多くの大人に囲まれて育つ方が成長しますし、社会性も豊かになります。高齢者にとっては、かわいいお子さんの笑顔があるだけで元気になれます」。それは、育児と仕事を両立することができなかった「悔しさ」から生まれたアイデアでした。「同じ思いをするママさんを少しでも減らしたい。あれもやりたい、これもやりたい、わがままな女性の夢を叶えたい。女性が社会進出をする手助けになりたい。店舗や事業所で働くスタッフも育児と両立をしながら働いてくれています。そこを理解してフォローし合える会社になれたらと思っています」。

食を通して、体と自然の調和 地球に寄り添った生き方を提案

画像:came came(かめかめ)30の店内の様子

自然食カフェ『came came 30』の店名は、「食べる時には30回以上噛む」という咀嚼の考えから。同社の上野 剛シェフが足で見つけ、畑へ出向いて生産者の人柄、想いを感じて厳選した自然農法の地元野菜をメインに使い、根・皮・葉も全ていただくという発想からメニューを構成しています。

利用者の多くは女性。グルテンフリー、野菜・雑穀100パーセントの「came cameランチ」は、彩り豊かで目にも美しく、一口食べれば、身体が喜んでいるのがわかると口コミで評判が広がっていきました。

名物の惣菜メニューは「丸ごと人参フライ」。人参を一番糖度が上がる状態まで蒸して、米粉の衣を付け、菜種油で揚げています。また、白砂糖・乳製品・卵・小麦粉不使用のケーキやグルテンフリーのスイーツも人気。ナッツアレルギーに対応した「チョコとバナナのズコット」や豆乳やココナッツオイルを使った、胃もたれなし、罪悪感なしの「レーズンサンド」も新たな名物になりそうです。「私たちが提案したいのは、アレルギーの方でも美味しく食べることが出来るケーキです。一般に売られているものとは印象が違うと思います。生地がしっとりふわふわという喜びではなく、もっとその先の身体が喜ぶものなのです」。

このお店を開いたのは、地域の方に「健康意識」の気付きをしてほしいという願いからでした。また、地元野菜を使う理由は鮮度だけでなく、輸送費が掛からず、エコにも繋がるからです。「ここに来たお客様が『なんでこの店は乳製品や生クリームを使わずにケーキを作っているのだろう?』、『お肉を提供しないのはなぜ?』という疑問や『うちは野菜が少なかったな。もう一品足そうかな』など思ったことを、ご家庭に持ち帰っていただき、会話の中に入れていただきながら、コミュニケーション、食事、健康を豊かなものにしていただきたいという想いも込めています。でも、押し付けることはしたくないので、あくまでも選択肢の一つとして、暮らしの一部に取り入れていただきたいと思っています」。

同店のある商店街では、過去に朝市をやっていたことがあると鈴木さんは記憶しています。「私たちが大切にしているのは目の前の人ですが、最終的には地球環境のために繋がると思うので、地球に優しい活動をしている人たちや本物のことをしている人たちが集まったマルシェを定期的に開催できたらいいなと考えています。また、休日をゆったりとした気持ちで過ごしていただけるような暮らし方の提案もしていきたいです」。

お客様より優先したいことは スタッフの健康と幸せ

画像:came came(かめかめ)30の外観

同社のスタッフは現在60人。一番印象的だったのは、皆さんの笑顔が本当に素敵で、イキイキと仕事をされている姿でした。

「弊社は優先順位として、お客様の前にスタッフが幸せであること、心の安定を考えています。そうでなければ、幸せな育児も保育も介護も出来ませんし、気持ちに余裕がないとお客様に提供するサービスにも反映されてしまうと思います」。

会社を運営する上で、どんな事業をするかより「誰とやるか」を重要視していると言う、鈴木さん。「先ほど、当店のおススメのメニューを聞いていただきましたが、会社全体の売りはスタッフです。保育も介護もシステムや設備というより、完全にスタッフで売れます!と言えるぐらい自信があります。皆、優しさに溢れているし、思いやりも真心もあり、お客様のことをみてくれるので本当にすごいなと思っています」。

今後の展望や夢

画像:株式会社graingrain(グレイン グレイン)代表の鈴木 美緒(すずき みお)さん

鈴木さんの今後の展望や夢について伺いました。「私は店舗数を拡大したいとか年商いくらを目指すとか、そういう考えは全くなく、自分が見切れる範囲のスタッフを幸せにしたい。それに比例して地域の方の幸せ、豊かな生活をサポートすることを、どんな方法でも続けていきたいと思っています」。

また、春日部を「介護と保育に優しいまちにしたい」という大きな夢も現実のものとして見据えています。「これからも高齢者は増えていくので、デイサービスがあれば、支える家族の負担を軽減することが出来ます。また、保育園があれば、ママたちが働きに出ることができ、経済も回ります。そこに携わり、素晴らしい職業をしているエッセンシャルワーカーを春日部に増やし、心からその仕事が好きだと思ってもらえることが目標です。弊社の保育園で高齢者に見守られながら育った子どもたちがいずれ介護の仕事に就いてくれたとしたら最高のストーリーですね。その時はうれしくて泣いてしまうと思います」。

春日部で開業や起業を考えている人に鈴木さんからのメッセージ

最後にこれから春日部で開業、起業を検討している方にメッセージをいただきました。「私は、生まれ育った愛着のある土地で働くことが出来ていることに、ものすごく幸せを感じています。それが地域のために繋がっていったら、より一層、充実感も違うと思います。会社をつくるためには、広い視野で見ることも大事なのですが、まず、地域に住んでいる人たちや社会が求めている夢の実現、負の解消にどこまで手を伸ばせるかを意識して会社づくりをすると、たくさんの『ありがとう』が集まってきます。ありがとうは『対価』にも繋がることなので、どれだけたくさんのありがとうを集めることが出来るかを考え、地球に優しい会社を作って欲しいなと思います」。

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